イタコが持つ霊能力・霊媒術

イタコの霊能力

イタコの霊能力

イタコの霊能力とはどのようなものでしょうか。イタコの最も著名な能力は口寄せでしょう。これは霊を自らの身体に降ろし、その口を通して霊の言葉を伝えるというものです。死者の言葉を伝えることが有名ですが、イタコの能力はそれだけではありません。かつて地域の中にいたイタコは、邪を払い、病気の治癒を助ける医師としての役割を担ってきました。また、縁結びなど、地域の人間関係を取り持ち、円滑にすることも大切な仕事でした。イタコは現在も、病気治癒、悪霊払い、縁結び・縁切りなどに力を発揮しています。

また、神の声を聞くことのできるイタコは、未来を予知・予言することでも知られています。イタコの大切な仕事であるオシラアソバセ(東北地方で信仰されているオシラサマの供養)の際には、オシラサマを降ろして、家族の一年の吉兆、農作物の出来などを予言してもらう、ヨノナカウラナイと呼ばれる占いで神の言葉を伝えていました。オシラサマを信仰していたどの家でも、イタコの占いは日常のものとして組み入れられてきたのです。イタコが人気占い師として全国的に受け入れられたのも、このような歴史があったからでしょう。

イタコの口寄せ

霊を体に降ろし、己の口を通して霊の言葉を伝えるイタコの力を口寄せといいます。口寄せと一言で言っても、様々な種類があります。

最も有名な口寄せの術は、仏口でしょう(仏降ろしとも)。四十九日の法要が済み、成仏した死者の霊を降ろしその言葉を伝えるものです。亡くなった人の懐かしい声を聞きたいというばかりでなく、亡き父母に相談に乗って欲しいなどというときもこの仏口にて口寄せが行われます。また、先祖の怨念が、今を生きる私たちの生活に霊障となって表れているときがあります。何をしても上手くいかない、上手くいくことが確実なことでも失敗ばかり、原因のわからない病気などは霊障の可能性もあります。ご先祖様との対話を通じて、解決に至る場合もあります。仏口に似ていますが、四十九日を過ぎていない死者の言葉を伝える口寄せは死口と言います。

神口(神降ろし)は、神の霊を降ろす口寄せです。オシラアソバセの際に神様を降ろし一年の吉兆を占う習慣については上で述べました。一口に神の霊と言っても、日本には八百万の神がいるので特定の神を降ろすわけではなく、必要に応じて適切な神様を降ろします。占いや予言が必要なときは、この神口が使われます。神口による口寄せの術を使った占いでは、恋愛相談、進路相談、仕事関係、転職相談、金運開運など様々なことについて、未来の展望を知ることができます。

イタコの能力は、死んだ人の霊を降ろす仏降ろしがあまりにも有名ですが、生きている人間の霊魂を降ろすこともできます。生口と呼ばれるこの術で霊魂を呼び出された側は、全く気付かないといいます。恋愛における悩み、家族間や仕事など人間関係にまつわる悩みの絶えない現代、イタコの生口で相手の本心を聞きたいと言う人が後を絶えません。なお、恐山のイタコマチでは、仏口による口寄せが主になるので、生口で生きている人の霊魂を降ろしてもらうことはできません。

イタコの自動書記

イタコのあまり知られていない能力に自動書記があります。これは、伝統的に継承されてきた能力というより、必要に応じて身に着けてきた能力と言えるでしょう。交霊した霊の言葉を、そのまま紙に残すものです。会話のように受け答えがあるわけでなく、例えば「遺言を残さずに亡くなった人の生前の意思を知りたい」など、一方的に相手の意思を聞きたいときに使用されます。また、「これから○年の間の吉兆を知りたい」など、漠然とした予知や占いでも使用されます。何度も読み返すことができるので、口寄せよりもはっきりと霊の伝えたいことがわかるという利点があります。ただし、一方的に霊の思いを書きつづるので、有益な情報とそうでない情報が入り混じることがあります。

祈祷術

縁結び、いわゆる恋愛成就呪術の祈祷、願望成就の祈祷など、イタコの強い霊能力を持って、ご祈祷することで、願望を成就させます。昨今多い恋愛相談では、相手の霊魂を降ろして心の内を聞くことができますが、そこからさらに、恋人同士になりたい、結婚したいなどの願望を叶えるためには神仏に助力を乞うご祈祷をすると効果的です。神仏の霊と直接交霊することのできるイタコの祈祷の力は強力で、願望成就、恋愛成就に強い力を発揮します。

病気治癒

イタコと密接な関係のある東北の地方では、昨今までよほどのことがない限り病院に行ったことがないという人も多かったものです。風邪をひいてもイタコさんというくらい、気軽にイタコに病気を診てもらっていたのです。古来、貧しい人の多かった東北地方において、医者にかかることができない人は多かったのでしょう。イタコの呪術が地域医療を担ってきたと考えられます。その名残が、東北地方にはいまだ残っているのでしょう。治りにくい病気、原因がよくわからない病気の中には特に、先祖がらみの霊障が関わっていることが多いことは上にも書きました。このような病気は、病院に通って現代の最新医療をもってしても治すことができないものですが、イタコの除霊をもって一発で治ったという話は数多くあります。

除霊・悪霊退散

偶然というには不自然なくらい、上手くいかないことや失敗が多い場合は、先祖がらみの霊障り、あるいは悪霊に取りつかれている場合があります。このような場合、仕事で上手くいかない、人間関係で上手くいかないことが続き、本人の努力ではどうしようもできません。次第に、生きる力すら失っていきます。口寄せで霊の言葉を聞くことができるイタコは、単なる除霊ではなく、例えば、ご先祖様の無念を聞き出すなど、前向きな解決策を探り、人生をよりよい方向に導いてくれることも可能です。

イタコの霊能力は本当か?

このことについては、常に議論されています。結論から言うと、本当の霊能力を持ったイタコはいる。特に強い霊能力を持った特別なイタコもいる。しかし、残念ながら霊能力の弱いイタコもいるということも事実だということです。つまり、イタコ全てをくくって、霊能力が本当かうそかという議論をしてもしょうがないということです。また、イタコの霊能力が本物であったかは、それを受けた本人にしかわからないということもあります。ひとつの有名な例を紹介します。

恐山に観光に来ていた外国人の話です。彼は、イタコというものを知らずに恐山のお祭り観光に来ていました。行列ができていたのでガイドに聞くと、イタコについての説明をされました。興味を持ち、行列に並んで口寄せをお願いしたのです。このときの口寄せは大変だったと伝えられています。何しろ、本人は全く日本語がわからないので、通訳を挟んでの口寄せとなるからです。彼は死んだ母親の霊を降ろして欲しいと頼みました。周りの人は固唾をのんで見守っていました。何しろ、外国人の霊を降ろすことができるのか、興味があったのでしょう。しかし、口寄せが始まったとたん、がっかりした空気が流れたというのです。なぜなら、イタコが話す言葉は強烈な東北弁そのままで、どう見ても、外国人の霊が降りてきたようには見えなかったからです。しかし、口寄せが終わると、本人は涙を流して、「本当にママだった!」と言ったそうです。なぜなら、自分とママしか絶対に知らないことを話したからだというのです。

この例が語るように、口寄せは、傍から見るとインチキに映ることが多いようです。しかし、イタコと口寄せをお願いした本人同士の間は、魂同士で会話をしているのでしょう。ですから、外国人の彼は、イタコが強烈な青森弁で話していたことなど全く介さなかったのです。おそらく、彼の中では、懐かしいママの言葉、ママの声が聞こえていたのでしょう。

このような例は多々あります。特に、観光客の多く集まる恐山では、イタコが東北弁で話しているにも関わらず、大阪や東京などから人が、「口調から口癖まで、本人そのものだった」と言うことがよくあります。口寄せの間は、傍から見ているだけではわからない、魂同士の対話がなされていると考えられます。さて、ここで一つ気になるのは、どのイタコが本物の霊能者であり、高い霊能力を持ったイタコであるかです。特に昨今人気の高い電話占いにおいて、誰が本物の霊能者かを見分けるかは難しいことです。有名な人気占い師が、果たして本当の霊能力を秘めた本物のイタコかどうか。これは実際に体験した人の話を聞いて判断するほかありません。

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